台湾の街で生きる少年が僕らに問いかける~本当に大切なものを、考えてみよう~『小さな場所』東山彰良【感想・評価】

~本当に大切なものを考えてみよう~『小さな場所』東山彰良【感想】 教養

こんにちは。

「タピオカミルクティーを飲んでいる俺は若い世代にも教養があるタイプの大人なんだぞ」って顔で堂々と街を歩くような大人にはなりたくないなーといつも思う、おーそねです。


さて、今回紹介するのは、東山彰良 著『小さな場所』!

「子供に“本当に大切なこと”を語れる自分」になりたい人におすすめの一冊です。

勉強よりもお金よりも大切なものがこの世にあるってことは、まあ分かる。

でも、いざ言葉にしろってなると……

そんな人の悩みに答えるのが、本書『小さな場所』。

僕にはまだ子供がいないので分かりませんが、

子供に、人生において一番大切なことを語れる親って格好いいじゃないですか。

小説やアニメでも、本質を見抜いて、例えそれが周りの意見とは違うことだとしても、堂々と発言し主人公を導くキャラって格好いいと思うでしょ?

そういう人間になることの大切さを教えてくれるのが、この本です。

きっと皆分かっているんです。

何年も生きていれば、何が大切で、何が間違っているのかなんて。

でも、それを振り返ったり、言語化するのが難しかったりするから、迷うんです。

台湾の小さな街で、主人公が見たものや考えたこと。

そこには、共感できることがたくさん含まれています。

自分の人生と照らし合わせて、自分にとっての「本当に大切なもの」を、この本から感じ取ってください。

それが出来たなら、この本を読んだことには値段の何倍もの価値があったと、言えるのだと思います。


↓内容について

著者の東山彰良は台湾出身で、街の“台湾っぽさ”が至る所に感じられます。

台湾の日本観だとか、刺青の文化だとか。

日本と似ているようで全然違う台湾のリアルな描写も、この本の魅力です。

一冊の中に収録されている、6つの短編にはそれぞれテーマや伝えたいことがあり、

その感覚は、『君たちはどう生きるか』や『星の王子さま』を読んでいるときのものと似ていました。

教訓のお話というより、物語としての印象が強い一冊でもあります。

何も考えず、手に取ってみた一冊として読んでみても、後悔しない面白さがありますよ。

~大切なことは目に見えない~サン=テグジュペリ『星の王子さま』

↓ここからはネタバレありで解説していきます!

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感想・解説【ネタバレあり】

ここからは『小さな場所』を読んで僕が感じたことを深掘りしていくコーナーです。

台湾の日本観と、霧社事件

これは、僕がこの本を読んで一番良かったと思ったことです。

“霧社事件”皆さん知っていますか?

僕の無学のせいでもありますが、僕は一ミリも聞いたことがありませんでした。

“霧社事件”というのは、日本が台湾を統治した時代における最大規模の抗日蜂起事件です。

詳しくはWikipediaを見てほしいのですが、概要を書きますと、

いざこざから日本人の巡査に手を出した原住民たちが、日本軍の報復を恐れたために、

300人ほどが蜂起し、各地の駐屯所と運動会を襲い、

結果、130人以上の日本人と、700人以上の原住民が死にました。

こうした事件を、台湾では小学生の時代から教えている。

そのことに純粋に驚きました。

考えれば分かることなのに、実感がなかったというか。

それは、日本では加害者の教育が薄いことに関係があるのでしょう。

原爆などの被害者の教育はちゃんとするのに、台湾統治時代のことなんて、年号を少し覚えるだけで終わりでした。

これでは、満足に海外にも行けません。

「お前たちのせいで」と言われても、「ごめんなさい。何のことだか……」としか答えられないのはあまりにも、馬鹿げています。

だから、僕は独学で歴史を学んでいこうと思いました。

“歴史を知る”ということも、本当に大切なもののひとつだと思うからです。

「むかしの山地人で、霧社事件を引き起こした人だよ。阿華、学校で習わなかったの?モナ・ルダオが日本人をたくさん殺して、そのせいでもっとたくさんの山地人が日本人に殺されたんだ」

『小さな場所』より引用
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主人公の書いた物語が示す、この小説の結論は

主人公の“景健武”は、様々な経験を踏まえて、童話のような物語を書きます。

小説のラストも、その物語で締めくくられていて、まるで著者の言いたいことがこの物語の中に詰まっているかのようです。

それでは、内容を見ていきましょう!


主人公は一匹の蛙。

蛙は汚い井戸の中に住んでいました。

あるとき、コオロギがやってきて、井戸のジメジメした汚さを指摘します。

井戸の中しか知らない蛙にとってその言葉は新鮮でしたが、井戸の透き通った水の価値を信じていた蛙はコオロギを一呑みにしてしまいます。

蛙は井戸の中を気に入っていました。

しかし、あるとき井戸の水が涸れ、蛙は仕方なく井戸の外に出ることに。

そこから、蛙の冒険が始まります。

道中、ニジマスやウサギ、ザリガニなどに出会いながら、もっと住むのにいい場所を求めて、蛙は旅をし続けました。

その長い旅路の末出会ったのが、大きなクジラでした。

しかし、海はお前みたいのが来る場所ではないと、蛙は海に住むことを拒否されてしまいます。

海を諦めた蛙は、最後にクジラに質問をします。

「あなたはずっとここに住んでいるのですか?」

「ああ、そうだ。ほかにどこへ行けというのだ」

その答えを聞いた蛙は、どんな思いを抱いているのか、ただ海へ帰るクジラを見つめ続けていた、

というお話です。


「井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知る」

ということわざからインスピレージョンを得た話で、その意味から考えると、

井戸よりも良いところを求めて旅を続けてきた蛙が、最後クジラに拒否される、というのは、

完全に現実の比喩ですよね。

歌手の夢を目指して上京した少年が、現実の厳しさに打ちのめされて別人のようになる、なんてのはよくある話でしょう。

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つまり、この『小さな場所』というお話は、

小さな場所にだけいてもダメだし、かといって大きな場所に行っても厳しい目に遭うかもしれない、

という何も決めつけない結論を出しています。

井戸の中の居心地の良さと無知の危険性、海に出たときの価値観の広がりと厳しさ。

この二つの側面が現実にはあって、それを分かった上で生きていくことが大切なのだと、この本は言っているのです。

挑戦しないのも良くないし、挑戦したときのリスクもちゃんと考えておく

確かにこれを聞くと、最強の考え方のような気がします。

結局、物事を見る上で一番大切なことは、多面性を理解するということなのだと思います。

一方向だけじゃなくて、別の道があるのではないか?と疑いながら進むことが大事なのでしょうね。

「クジラと会ったあとの蛙の気持ちは、ふたとおりしか思いつかなかったんだ。自分を憐れむか、さもなきゃクジラを憐れむか」

……

「だから、蛙はどうもしない」ぼくは言った。「蛙がどうふるまっても、それは嘘になっちゃう気がするんだ」

『小さな場所』より引用

ことわざに関連した映画『空の青さを知る人よ』

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まとめ

ここまで 東山彰良 著『小さな場所』の感想を書いてきましたが、いかがだったでしょうか?

大切なことは、何だろう?

なんだかんだ言って、

そう考え続けることが、一番大切なことなのかもしれませんね。

そうして考え続けるためのヒントを僕たちは、こうして読書を通じてもらっているのだと、僕は思います。

落合陽一も言っている「大事なのは考え続けること」『2030年の世界地図帳』落合陽一著

最後に

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それでは良き読書ライフを!!

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