【解説】『その白さえ嘘だとしても』欠点を抱えた高校生たちのクリスマスイブ。魔女の正体。

書評
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『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著 あらすじ&概説

クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。インターネット通販が使えない――。物資を外部に依存する島のライフラインは、ある日突然、遮断された。犯人とされるハッカーを追う真辺由宇。後輩女子のためにヴァイオリンの弦を探す佐々岡。島の七不思議に巻き込まれる水谷。そしてイヴ、各々の物語が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。心を穿つ青春ミステリ、第2弾。

新潮社公式サイト(最終閲覧日5月19日)
https://www.shinchosha.co.jp/book/180034/

『サクラダリセット』の著者河野裕さんの、心を穿つ新時代の青春ミステリ!https://soneyu.com/kokosei-ranobe/

捨てられた人々の暮らす不思議な島、階段島を舞台に高校生たちの一風変わった青春を描く「階段島シリーズ」の第二作です!第一作は、

『いなくなれ、群青』

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『いなくなれ、群青』書評!この記事では『いなくなれ、群青』を読もうか迷ってる人、すでに読了済みで他の人の書評を読んで作品をより深く味わいたい人向けに、おすすめポイントとネタバレありの書評を書いています。是非ご覧ください!

続編は、

汚れた赤を恋と呼ぶんだ

凶器は壊れた黒の叫び』

夜空の呪いに色はない』

『きみの世界に、青が鳴る』

と続きます。

【ネタバレあり】『その白さえ嘘だとしても』【解説】

前作に続き、その繊細できれいな文章に魅了されました。読んでいて「やっぱ小説って素晴らしいな」って自然と思える作品ってあんまりないと思います。その点で、僕はこの河野裕さんの「階段島シリーズ」に出会えたことに、出会うことのできる時代に生まれたことに、心から感謝の念を表したい、そう思うんです。

今作は、七草と真辺だけでなく、水谷佐々岡の三人にもフィーチャーしています。

ついに魔女の正体も判明して、ミステリの面でも非常に楽しめました。

優等生の仮面を被る委員長、水谷

嫌われたくないから、できるなら褒められたいから、精一杯掃除をするだけだ。あとで廊下がどうなろうが知ったことではない

『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著

水谷の本質が表されているシーンです。小学校時代の掃除の時間、自分が掃除をした廊下を男子に汚されても、何にも思わなかったことに水谷自身が驚愕します。

「汚れた廊下を見ても、ちっとも悲しくなんてなかった」

他人に認めてもらうため、褒められるためが、根源の行動基準になっているのです。そのため行動自体は単なる副産物にすぎないわけです。

僕はこの水谷の考えが本当によくわかリます。それが間違っているとか正しいとかは別にして、多分学生時代に優等生と呼ばれる人の大半がこのタイプなんだと思います。

だからこそ、真辺のような純白の人間を嫌ってしまうのも、非常によく分かるんです。「ずるい」と思ってしまうんですよね。自分ができなかった生き方だから。

でも同時に憧れもするんです。そんな純粋でまっすぐな人間がいるだけで世界が救われたような気持ちになる。実際、僕も高校時代、真辺のような汚れのない人間を探していました。この辺は七草に近いのかもしれません笑

ヒーローに憧れる少年、佐々岡

それどもなお、主人公のように生きることには意味があるのだと、佐々岡は信じている。みんな嘘だとしても、きっと努力は報われいつかは問題をクリアできるのだと信じている方が、正しいに決まっている。

『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著

男なら大抵の人は、ヒーローに憧れるんじゃないかなと僕は思います。ただ、いつかは卒業してしまうだけで。

英雄願望とか、ヒーローに憧れることって悪い感情じゃないと思うんです。誰かに明確な迷惑をかけるわけでもないし、何なら日々の活力になったりもします。それでも、人生っていう観点から見ると、それらはやっぱり欠点で大人になるまでに捨てなきゃいけないものなんですよね。それって、なんだかとても悲しいことのような気がしました。

極度にしゃべるのが苦手な少女、堀

堀はそっと、両手を持ち上げて。秘密の宝箱を開くみたいに、マフラーを口元からずらす。

「私が、魔女です」

『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著

ついに魔女の正体が判明しました。堀が魔女だったとは。信じられないような、妙にしっくりくるような変な感じです。まあ、電話の時の人物は明らかに別人だろうから、まだ何らかの謎が隠されていそうです。

そして、堀が、手を上に差し出して、雪を降らせるような描写があり、実際に粉雪が降り始めます。

晴天の夜空で舞う雪なんてものを見るのは、初めてだった

満点の星空で舞う雪は、不思議なことに、自然だった

『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著

色とりどりの屋根は闇が降りて黒く染まり、その上に雪が降り積もっていく。この島のクリスマスイブのすべてを、優しく包み込むように。もしその白さえ嘘だとしても、僕はこの景色を綺麗だと言う。すぐに溶けてしまうのだとしても、心の底から綺麗だと言う。

『その白さえ嘘だとしても』 河野裕 著

どちらも七草の心の言葉で、今作で僕が一番好きな言葉です。

雪の描写がとても綺麗でした。こうした七草の心情から、とてつもなく幻想的な雪の景色を想像してしまうのです。

まとめ

ここまで『その白さえ嘘だとしても』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

「階段島シリーズ」の第一作『いなくなれ、群青』の書評記事はこちらから!

https://soneyu.com/inakunaregunnzyou/

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