【書評・感想】門田隆将著『死の淵を見た男』「あの時原発で何があったのか」“思い”をすくうノンフィクション!!

【感想】門田隆将著『死の淵を見た男』「あの時福島第一原発で何があったのか」 ノンフィクション

映画『Fukushima 50』を観て、あまりにも知らないことに驚き、すぐ買いに走った本書「 死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 」

500ページに及ぶ分厚い文庫本を、なんと二日で読破してしまいました。

原発の仕組みやベントのこと、水素爆発や放射能汚染について、しっかりと事実ベースで書いてあるのにスラスラと読めるところが、本書の最大の魅力です。

数え切れないほどの取材の果てに、「現場の人々の思い」と「当時そこで何があったのか」を白日の下にさらした著者渾身の一冊。

前提知識などまったくもって必要ない。

原発についてあの事故についてもっと知りたい人、そして映画を観て何かを感じた人全員におすすめしたい一冊です!!

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門田隆将 著『死の淵を見た男』あらすじ

2011年3月、日本は「死の淵」に立った。福島県浜通りを襲った大津波は、福島第一原発の原子炉を暴走させた。全電源喪失、注水不能、放射線量増加…このままでは故郷・福島が壊滅し、日本が「三分割」されるという中で、使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いを展開した男たちがいた。あの時、何が起き、何を思い、人々はどう闘ったのか。ヴェールに包まれた未曾有の大事故を当事者たちの実名で綴る。

映画『Fukushima 50』との違い

原作との大きな違いは、

  • 伊沢と吉田所長の関係性(原作では二人は同い年ではなく、所長を「吉やん」と呼ぶのは別の人)
  • 菅直人の悪役感(原作でも良い見方はされていないが、あそこまで悪役として描かれてはいない)
  • 吉田所長以外は仮名(原作では実名)
  • アメリカ大使館でのシーンと米軍の支援(原作ではない)

逆に忠実なところは、

  • 「現場の人々の思い」にフォーカスして描く
  • 「日時」「原子炉の状況」「専門知識」など事実に即した表現
  • 「二号機の爆発の回避」を奇跡として描く(物語的な失速を受け入れて)

絶賛か酷評かという評価の二極化が進む本作。

細かな違いはあれど、一番重要な「芯」は一貫している印象です。

原作には映画にないエピソードが含まれているので、「もっと詳しいことを知りたい」という人は、情報の補完という意味で本書を読んでみるのはありだと思います。

ただそこまでの新情報はないです。

当時の状況については映画でも十分把握できますし、映画の方が物語形式でわかりやすいので、あまり詳しいものを求めない人は映画だけでも十分だと思います。

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こんな人におすすめ!!

  • 原発事故についてもっと知りたい
  • 映画を観て何かを感じた
  • ノンフィクションで読んでみたい

『死の淵を見た男』のここが面白い!

1.“吉田昌郎”という人物

メインで描かれる、当時の福島第一原子力発電所長“吉田昌郎”

この人を知ることができただけでも、この本を読んだ価値があると言えるくらい偉大な人物です。

確固たる自分の信念を持つ豪快な男でありながら、人を心配し思いやる優しさを。

東電本店の命令も現場の判断で無視したり、きっぱりとした物言いで誰も止められなかった総理のイライラをおさめたというエピソードが残っています。

もし当時の所長が吉田所長じゃなかったら。

そう考えるとゾッとします。

それほどに「あの現場」には吉田昌郎が必要だったのです。

「自分が同じ立場だったらどうしただろう?」

ふと想像しながら謙虚な気持ちになる一冊です。

2.あのとき何が起こっていたのか

僕は事故当時、10歳でした。

すごくまずいことが起きているのは知っていたけど、「何が起きていたか」は全く理解していませんでした。

だから、映画を観て、本書を読めて、本当に良かったと思っています。

「現場での必死の闘い」、「現地民の避難」、「自衛隊の応援」、「政府の対応」、「実際の現場と想定されていた状況の差」、などなど。

「あのとき一体何が起きていたのか」

すべてを、は無理だとしても、知ろうとしないと、

「俺たちは何かを間違ったのか?」

そう問うた伊沢(佐藤浩市)の言葉に、答えを探してあげることはできません。

だからその意味で、本書は840円以上の価値を持つと僕は思います。

3. 胸を締め付けられるサブストーリー

本書には、映画では省かれたサブストーリーがたくさん収録されています。

突如救急車での応援要請がかかった自衛隊員や故郷を離れ避難する現地の人々、その場に居合わせて惨状を写真に収めた記者、そして大津波で犠牲になった作業員の遺族の話。

どれも読んでいて胸がキュッとなるものばかりでしたが、決してお涙頂戴で書かれたわけではないことが、伝わってきます。

“原発事故のありのまま”を伝えるためにこれらの話は必須だったのだな、と何回もの取材を重ねた著者の圧倒的な熱意に触れて思うのです。

原発事故は原発だけで語れるものではなかったと、そう思わされました。

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著者の関連作、次に読むなら……?

著者の関連作は読んだことがないので、ここでは映画の小説版を紹介!

映画「Fukushima 50」の小説版

オリジナルエピソードも収録されているそう。

興味のある方はぜひ!

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まとめ

『死の淵を見た男』のここが面白い!

  • “吉田昌郎”という人物
  • あのとき何が起こっていたのか
  • 胸を締め付けられるサブストーリー

映画『Fukushima 50』の原作本「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」

著者門田隆将の取材力とノンフィクションを書く実力が存分に発揮された本書は、

「専門的なことも書いてあるけれど専門的知識がなくても読めるノンフィクション本」

として、かなり高い評価を得ています。

映画では作中、「唯一の被爆国たる自覚がない」と、アメリカ大使が嘆くシーンがありました。

「当時そこで何があったのか」、「現場の人々はどんな思いでそこに残ったのか」それを知ること。

広島・長崎しかり、福島しかり、風化にまかせるのではなく教訓として後世に残すこと。

それがこの惨劇を経験した僕たちの果たすべき役割なのだという気がします。

ほんとにスラスラと読める本なので、学生の方もぜひご一読を!!

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