“ポルシェ”とは何の象徴か?人が本当に大事にするべきものを問う!!『ポルシェ太郎』評価&感想【ネタバレなし】

書評

人はなんのためにポルシェを買うのでしょう?

ポルシェなんて街中で走るにはむしろ不都合です。真価を発揮するのは高速道路に乗った時ぐらい。

「ただの見栄だろ」「金持ちの道楽だ」そんな風に思う人もいるでしょう。

しかし、本作『ポルシェ太郎』でポルシェを買うのは、年収1500万の小さな会社の社長である。そこまでの金持ちではないでしょう。

ですが、自分の年収と同じ値段の車に一目惚れした主人公の生活は、だんだんとポルシェ中心のものに変わり、さらには裏社会の世界にも足を踏み入れることに

ポルシェを買った主人公“大照太郎”が辿る数奇な運命を楽しみながら、人が本当に大事にするべきものに気づかせてくれる一冊です。

スポンサーリンク

内容≪どんなお話?≫

ここから先は若干のネタバレを含みます。

『ポルシェ太郎』は一言で言うと、「背伸びしてポルシェにしがみつくかっこ悪いおじさんが、普通のおじさんになっていくお話」です。

羽田圭介さんのどこか斜に構えたような文章で彩られる主人公“大照太郎”の物語。

独立してイベントキャスティング会社を立ち上げた太郎は、あるときふとポルシェに一目惚れし、衝動的に購入してしまいます。

その後、SNSで写真をアップしたり、同窓会でポルシェの話をしたりするのですが、同級生たちにポルシェの良さを分かってもらえず、ポルシェの良さを理解できない多数派に苛立ちを覚えるようになります。

また、自分よりも一回り若い女優の女の子と付き合ったり、裏社会との繋がりを持つようになったりと、分をわきまえないような行動に出てしまうことも。

しかし、終盤に起こる劇的な出来事を経て、最終的に太郎はある現実と向き合っていくことになるのです。

太郎の物語はどこか他人事ではいられない、現実味があると僕は思います。羽田圭介さんらしい小説ですね。

この現代社会で生きていく中でとても参考になる一冊です!

感想≪どこが面白い?≫

この小説の面白さのひとつは、太郎の行動に対してのハラハラ感だと思います。

上でも述べましたが、太郎はポルシェを買ってから分不相応な行動に出ることが多々あり、「おい、やめとけよ」とつっこみを入れたくなるような緊張感が常に漂っています

正しいことを言っているときもあると思うのですが、太郎は物語を通してあることに気がついていないのです。ある意識が抜け落ちているというか。

そこに注目してみるの面白いかもしれないですね。

あと、ひとつ注目して欲しいシーンがあって。

太郎がある日急に裏社会の人たちに呼び出されて、ポルシェであるものを運べと命令されるんですけど、このときの太郎の心情が太郎という人間の本質を表しているようでとても面白かったんです!

ハラハラ、ワクワクするようなスリルもあって。

ぜひ注目して読んでみてください!

考察≪伝えたいこと≫

自分が見てほしいと思う姿ほど、人からは見てもらえない。自分が思いもよらない姿を、人は見ている。そして相手が思いもよらぬ姿を、自分は見ていたりする。自分と相手の見ているところは違う。そこになんらかの勝機を見出せるはずだ。

羽田圭介著『ポルシェ太郎』

僕の胸に深く刺さった文章。

この小説ではポルシェがテーマになっていますが、ポルシェはあくまで一例なんです。

SNSしかり、今の世の中には自分をコーティングするもので溢れかえり、人は外側にあるもので自分をカスタマイズしようとする

でも、必ずしも他人がそれを理解してくれる、認めてくれるとは限らないし、案外人は自分の思いもよらない姿を見ていたりします。

だからこそ人は、ポルシェにしがみつくような人生じゃなく、自分の内面に目を向けて、本当に大事なものを見極め、できることを全力でやる人生を目指すべきだと著者は言いたいんじゃないでしょうか。

ポルシェに限らずですけど、ポルシェありきの生き方をしている人ってダサいですからね。自分にはポルシェしかないみたいな。

ポルシェに乗っていて本当にカッコイイ人って、ポルシェなんてただの見栄だって自覚している人だと思います。

まとめ

ここまで『ポルシェ太郎』の書評をしてきましたが、いかがだったでしょうか?

ビートたけしが描く80年代の真実とは!?ビートたけし著『キャバレー』

綾小路きみまろの軌跡を描く!ビートたけしにしか書けないストーリーがここに!『キャバレー』評価・感想【ネタバレなし】
1970年代のキャバレーを舞台に綾小路きみまろの半生を描く『キャバレー』。3つの観点から、本作の魅力をサクッと紹介します!ネタバレなしです!

貧困について本気で考えさせられる一冊!天祢涼著『希望が死んだ夜に』

“希望が死ぬ”とはどういうことか、本気で想像したことはありますか?天祢涼著『希望が死んだ夜に』評価&感想【ネタバレなし】
天祢 涼 著『希望が死んだ夜に』評価&感想記事です。女子中学生の貧困の現実とは!?作品の魅力、余すところなく、お届けします。

大事にしたくなる愛おしさがここに!伊坂幸太郎著『アイネクライネナハトムジーク』

さあ、驚きと新感覚の世界へ!!伊坂幸太郎の恋愛小説!『アイネクライネナハトムジーク』評価・感想【ネタバレなし】
『アイネクライネナハトムジーク』ってどんなお話?面白いの?読むべき理由と魅力を、分かりやすく、さくっと紹介!

Twitterも始めたのでよかったらフォローしてください!

コメント