【解説】『凶器は壊れた黒の叫び』優しい魔女の悲しき理想。七草が捨てたもう一人の自分とは?

書評
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『凶器は壊れた黒の叫び』 著 河野裕 あらすじ&概説

新聞部の創設。柏原第二高校に転校してきた安達は、島で唯一の小学生・相原大地のために部活動を始めることを提唱する。賛成するクラスメイトたちだったが、七草はそれが堀を追い込むために巧妙に仕組まれた罠であることに気づく。繙かれる階段島の歴史と、堀が追い求めた夢。歩み続けた7年間。その果てに彼女が見つけた幸福と、不幸とは……。心を穿つ青春ミステリ、第4弾。

新潮社公式サイト(最終閲覧日5月23日)
https://www.shinchosha.co.jp/book/180080/

『サクラダリセット』の著者河野裕さんの、心を穿つ新時代の青春ミステリ!

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続編は、

夜空の呪いに色はない』

『きみの世界に、青が鳴る』

と続きます。

【ネタバレあり】『凶器は壊れた黒の叫び』【解説】

『凶器は壊れた黒の叫び』、ついに「階段島シリーズ」四作目です。

堀が魔女となったルーツ、七年前に七草が捨てたもの、安達の目的が明らかになると共に、七草と真辺の関係もまた変わっていきます。

それでは、僕が特に気になった三点を中心に解説をしていきます!

安達の思惑

結論から言うと、安達の思惑は「魔法を奪うこと」、それだけでした。

「決めたよ。私は私の理想に、真辺さんを選ぶ」

『凶器は壊れた黒の叫び』 著 河野裕

七草は、安達が魔法を奪ったその先の目的を気にしていましたが、その先はありませんでした。

安達の目的は、堀から魔女の座を奪い、魔法を捨てることだけで、自分でその力を使うことに執着していなかったのです。

安達は、なにかを救おうとしているようにも見えます。その裏側にある安達の思いは、まだ明かされていないので、これからの展開が楽しみです!

真辺の優先順位

「でも七草に関して、一番守りたいものは感情じゃない。恋愛を理由になにかが決まって欲しくない。もっと純粋であって欲しい」

凶器は壊れた黒の叫び』 著 河野裕

真辺は、「七草と恋人になれたら嬉しい」と自覚しながらも、それより大事なことがあると言います。

そして、その大事なこととは「尊敬」でした。

時には衝突もするけれど、互いに価値観を尊重し合い思い合う関係はとても美しいと思います。一般的な「LOVE」の関係の視点からみると、少し悲しい気もするけれど。「好き」より「尊敬」を優先できる関係にはとても憧れるし、恋愛の枠を飛び越えている感じがしてすごい好きです。

もう一人の七草

未だ黒でいる僕に彼は拾われたかったのだろう。彼を殺したのは僕だ。僕に殺させたのは彼だ。凶器は壊れた黒の叫び。光を一欠片も遮らず、ただ近くにいたいと願っていた頃の理想。その純情で鋭利な声で、彼は回りくどく自殺した。

凶器は壊れた黒の叫び』 著 河野裕

七年前、堀に出会った七草が捨てたもの、それは「自分自身の幸せに手を伸ばす勇気」でした。

だから、七年前から階段島に住む七草は、自分の作った階段島の呪いに苦しむ堀の姿に耐えきれず、幼い頃に抱いた夢よりも自身の幸せを優先してしまった。

でも、それは七草という人間の根源的な価値観に反する行為で、だからもう一人の七草は自殺を選び、七草がそれを拾うことになります。

そして、ちょっとだけ勇気を手にした「ハイブリット七草」は真辺との関係性を見つめ直すきっかけになるのです。

僕は弱々しい黒でいよう。透明な黒でいよう。彼女の孤独な理想を抱きしめて、その光を遮らないまま、僕だって孤独な黒でいよう。

『凶器は壊れた黒の叫び』 著 河野裕

自分自身の幸せに目を向ける勇気を持った「ハイブリット七草」は、「真辺由宇の敵になること」を決心します。

真辺由宇の幸せではなく、真辺由宇の理想を守り、自らも孤独な黒として真辺のそばに居続ける覚悟を決めたのです。

ただただ美しいなと思います。七草ほど人の本質を見て人の本質を愛せる人間はいないでしょう。それに、七草ほどエゴイストな考え方をする人も。だって、相手の幸せより自分の夢を優先して、必要とあれば敵となりボコボコにする覚悟だと言っているんですから。でも、そんな少し現実離れした人と人の繋がり方が、この小説の魅力なんだと強く思いました。

まとめ

ここまで『凶器は壊れた黒の叫び』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

「階段島シリーズ」の第一作『いなくなれ、群青』の書評記事はこちらから!

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