かつては名著が今では奇書?~書物から辿る、常識の変遷~三崎律日 著『奇書の世界史』【感想・評価】

オカルト・ロマン

こんにちは。

勢いでおしゃれな喫茶店のアルバイトに応募したのはいいものの、店員が女の子だけだったらどうしよう?と面接の段階から不安で一杯の、おーそねです。


さて、今回紹介するのは、三崎律日著『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバイ書物”の物語』!

(以下『奇書の世界史』と略)

皆さん、本は好きですか?

僕は好きです。大好きです。

本か彼女、どちらかを選べと言われたら、本を選びます。

この世には一生かけても読み切れないほどの面白い本がたっくさん、山ほどあるのです。

しかし、世界に幾千幾億とある本の中に、ごく稀に、その内容だけでなく、その存在自体が評価の対象となり、世の中に大いなる影響を与えた本が存在します。

“歴史的価値”を問われる本のことです。

「かつては名著と賞賛されたが、今では奇書」

逆に、

「かつては奇書とつっぱねられたが、今では名著」

と評される本がたくさんあります。

なぜ、時代によって評価が変わるのでしょう?

今では奇書だとされる本を、喜んで褒め称えて読んでいた人たちは、今より頭が悪かったのでしょうか?

きっと違います。

そこにあるのは“価値観の差”であり、昔の人たちは当時の“常識”の中で、本気で、本の価値を信じていたのです。

この『奇書の世界史』は、その“価値観の差”を、“常識”の世界史を、奇書、つまり数奇な運命を辿った書物の視点から読み解こうとした本です。

僕はこの本を読むことで、「世界にはまだ、僕の知らない面白い本がたくさんあるのだ」という喜びと、「常識とは一体何なのだろう」という疑問、を感じました。


今からすると悪のことも、当時の人には当たり前。

今当たり前のことは、未来では悪かもしれない。


僕たちは常に“常識”の絶対性への問いかけをしなくてはならないと、この本が教えてくれます。

「価値観の差分を探り、未来の自分を占ってみよう」

著者の三崎律日さんは、ニコニコやYouTubeで動画投稿を行っていて、代表作の「世界の奇書をゆっくり解説」はシリーズ累計再生回数600万回を超えます。

本が好きな人、世界史が好きな人、価値観をアップデートしたい人におすすめの一冊です!

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感想・解説【ネタバレあり】

ここからは『奇書の世界史』の中身を解剖して、その面白さをお届けしていきます!

『奇書の世界史』は二部構成で、

「かつて一般大衆に受け入れられたものの、今では奇書となってしまった書物」を紹介する本編と、

「かつて奇書やフィクションと目されたのにも関わらず、今では名著とされ称えられている書物」を紹介する番外編に分かれています。

本編:かつては名著、今では奇書

本編で紹介される書物はこちらの11点!!

  • 『魔女に与える鉄槌』
  • 『台湾誌』
  • 『ヴォイニッチ手稿』
  • 『野球と其害毒』
  • 『穏健なる提案』
  • 『非現実の王国で』
  • 『フラーレンによる52Kでの超伝導』
  • 『軟膏を拭うスポンジ』・『そのスポンジを絞り上げる』
  • 『サルゴルスキーの『ルバイヤート』』
  • 『椿井文書』
  • 『ピリティスの歌』
  • どうでしょう?

    知っている本はありましたか?

    『ヴォイニッチ手稿』が一番有名かもしれないですね。


    それでは、この11作品を個人的に「奇書とされた理由」で分類して紹介します!

    大きく分類すると2つ、あとは例外の三作品です。

    当時の価値観で書かれたものだから、奇書

    当時と考え方や常識が違うために奇書とされる書物、がこちら!

    『魔女に与える鉄槌』、『野球と其害毒』、『穏健なる提案』、『軟膏を拭うスポンジ』・『そのスポンジを絞り上げる』

    一番面白かったのは、『魔女に与える鉄槌』です。

    これは異端審問者のハインリヒ・クラーメルが書いた本で、魔女狩りのハウツーを網羅しています。

    魔女狩りなんて今からすれば、フィクション、おとぎ話の世界ですが、かつてはそれが当たり前だった。

    本気で魔女を信じて、無実の民を大量に虐殺していたのです。

    ペストの流行や作物の不作の原因を、何かに求めずにはいられなかった、原因があるのが常識だとされた時代で、その矛先が魔女に向いたのです。

    僕たちはこれをどう見る?

    馬鹿にするか?

    そういう時代もあったのね。で終わらせるのか?

    そうではなく、こうした価値観の移ろいから、真実を、未来を見据えるために問いかけ続けていこう、とこの本は言っています。

    「魔女を見つけ出す技術」

    「魔女を自白させるための効果的な拷問法」

    「処刑のための教義的に正当な方法」

    などが事細かに記されていたのです。まさに魔女狩りのためのハウ・ツーです。

    『奇書の世界史』より引用

    他にも、

    野球が、新渡戸稲造含む偉いおじさんたちに猛烈に批判された『野球と其害毒』

    アイルランドの窮状を見かねたジョナサン・スウィフトが、「一歳児を富裕層に高額で販売する食糧にする」という提案をした『穏健なる提案』

    ジョナサン・スウィフトはあの『ガリバー旅行記』の著者ですよ。

    ・現在アイルランドでは、貧困層において毎年12万人の子どもが生まれている。

    ・貧困層において、この子どもがたちが、働けるようになるまで育成することは困難である。

    ・そのため両親による子殺しや堕胎が後を絶たない。

    ・子どもとその両親をこの残酷な状況から救済するため、「満1歳になった赤ん坊を富裕層の食糧として高額で販売する」ことを提案する。

    『奇書の世界史』より引用

    こんなことまで書かれているそうです。衝撃でしょう?

    あとは、

    「傷を癒やす治療法として、傷を付けた剣の方に軟膏を塗る“武器軟膏”」を巡る言い合いが、『軟膏を拭うスポンジ』・『そのスポンジを絞り上げる』の二冊。

    あなたは“武器軟膏”試したことありますか?

    馬鹿馬鹿しいと思いますか?

    でも、これを主張したのは、ロバート・フラッドという高名な医者だったんですよ。

    このようにたった何冊かの本のエピソードを見ただけでも、考えさせられることがたくさんある。

    こうした本を読み視野を広めていくことが、立派な人間へと至る道なのかもしれません。

    全てがフィクションだったから、奇書

    続いて、

    全てがフィクション、偽造だと後になって分かったために奇書とされる書物、がこちら!

    『台湾誌』、『フラーレンによる52Kでの超伝導』、『椿井文書』、『ピリティスの歌』

    特に酷かったのは、『フラーレンによる52Kでの超誘導』

    “酷かった”というのは、多くの人に悪影響を与えたということです。

    その当時、抵抗を限りなくゼロにする超伝導という現象の研究が盛んに行われていました。

    しかし、どうしても超えられない壁があり、研究は行き詰まってしまいます。

    そんなとき、ヤン・ヘンドリック・シェーンは、ブレイクスルーとなる画期的な論文を発表します。

    当然、科学界は彗星のようなカリスマの登場に沸き立ち、若手の研究者の中にシェーンの理論を自身の研究テーマにするものも現れました。

    しかし、シェーンの論文に疑問を持つ者が現れ、別の研究論文の折れ線グラフが完全に一致することが発覚。

    それからシェーンのカリスマとしてのメッキが剥がれましたが、結果的に彼のせいで浪費された時間は数えるにあまりあります。

    このことは現代を生きる我々にとっても、無視できない話です。

    情報が大量に溢れるようになったこの社会で、何を信じて、何を疑うのか、それこそが自身の生き方に繋がり、人生を形作っていく。

    嘘に騙されない目を持つことが大事なのだと、分かります。

    他には、

    ヨーロッパ人が台湾を知らないのをいいことに、自分を台湾人だと偽り大勢を騙したジョルジュ・サルマナザールが著した『台湾誌』

    地域の歴史のアイデンティティを創作し、今も多くの土地で貴重な地域資料として扱われる、椿井政隆による「偽書」、『椿井文書』

    「紀元前6世紀に活躍した女流詩人ピリティスによる古代の散文詩集」だと、売れない詩人ピエール・ルイスが自らの作品を偽って発表した、赤裸々な愛の独白『ピリティスの歌』

    例外

    例外は、3作品です。

    何のために書かれたのかも謎、何の字で書かれたのかも謎、誰が書いたのかも謎の、謎だらけの書物『ヴォイニッチ手稿』

    現在、「世界最長の小説」と言われ、一人の男が60年以上にわたって書き続けた書物『非現実の王国で』

    あのタイタニック号と共に沈み、作るたびに災難に見舞われる呪われた書物『サルゴルスキーの『ルバイヤート』』

    『ヴォイニッチ手稿』は僕が大好きな書物のひとつで、オカルト方面にはまるきっかけとなった本です。

    ほんとに謎に包まれていて、圧倒的に発展した現代の科学技術でもまだ解けないという、超ロマンに満ちた一冊です。

    知らない方はこの機会に、“謎”という神秘に触れてみてはいかがですか?

    番外編:かつては奇書、今では名著

    番外編で紹介される書物はこちら!!

  • 『天体の回転について』
  • 『物の本質について』
  • 『月世界旅行』
  • 『天体の回転について』は、かの有名なニコラウス・コペルニクスの著作です。

    “コペルニクス的転回”は皆知っていますよね?

    絶対的権威だった教会の主張する天動説を否定し、地動説を唱えたことから、180度味方が変わるブレイクスルーのことを言います。

    余談ですが、『君たちはどう生きるか』でも主人公がコペル君と呼ばれ、コペルニクスが偉大な人物として表現されています。

    当時の権威、世の中の雰囲気に負けず、自分の信念を貫き通したコペルニクスの姿に、僕たちは自分として生きることの大切さを学ばなければいけませんね。

    他の二冊は、

    キリスト教の世界観と相容れなかったエピクロスの思想を韻律詩の形で表現した、ルクレティウスの著作『物の本質について』

    続いて、

    多くの研究者の卵を宇宙へと駆り立てた「SFの父」ジュール・ベルヌが生み出した世界初の本格SF小説、『月世界旅行』

    このエピソードでは、人類が初めて月に到達するまでの軌跡が描かれます。

    小説が人類を未来へと導いたという、壮大な、本の力を感じられるお話です。

    まとめ

    ここまで三崎律日 著『奇書の世界史』の感想を書いてきましたが、いかがだったでしょうか?

    数々のエピソードから僕たちが学び取れることは多い。

    奇書は好奇心を満たし、世界史は新たな視点を与えてくれます。

    本が好きな人、世界史が好きな人、価値観をアップデートしたい人におすすめの一冊です!

    最後に

    『奇書の世界史』気になった方はぜひご一読をおすすめします!

    芸術好きはハマりますよ。

    それでは良き読書ライフを!!

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