【感想】芹沢央『カインは言わなかった』芸術と死が織りなす混沌の世界へ!人の心を深く深く掘り下げた傑作ミステリー!!

【感想】カインは言わなかった【タイトル】 ミステリー

どうもSoneyuです!

年間400冊本を読むほどの本好きであります!

毎日、面白かった本や映画を紹介する記事を書いています!

さて、今回は芹沢央さんの『カインは言わなかった』のレビューをネタバレなしとありのパートに分けて書いていこうと思います。

読了済みの方もまだ読んでいない方もお楽しみください!

4時間30分ほどで読み終えました。

Soneyu
Soneyu

先に言っちゃうと、ここ一ヶ月で読んだ本の中で、一番面白かったです!

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芹沢央 著『カインは言わなかった』 あらすじ

芸術にすべてを懸けた男たちの罪と罰。
エンタメ界のフロントランナーが渾身の力で書き上げた、慟哭のノンストップ・ミステリー!
「世界のホンダ」と崇められるカリスマ芸術監督率いるダンスカンパニー。
その新作公演三日前に、主役が消えた。
壮絶なしごきにも喰らいつき、すべてを舞台に捧げてきた男にいったい何があったのか。
“神”に選ばれ、己の限界を突破したいと願う表現者たちのとめどなき渇望。
その陰で踏みにじられてきた人間の声なき声……。様々な思いが錯綜し、激情はついに刃となって振るわれる。
ダンサーと画家の兄弟。
答えのない世界でもがく孤独な魂は、いつしか狂気を呼び込み、破裂する。

【評価】こんな人におすすめ!


  • 芸術好き、表現者
  • 殺意を抱いたことがある
  • 新感覚の小説を読みたい
  • 自分なりに考えながら読みたい

間違いなく、この1ヶ月で一番面白かった!

冒頭のプロローグで提示される「誰が誰を殺したのか」という謎。

このミステリーとしての謎が脇役のように感じるほど

魅力に満ちている作品でした。

というか、全ての魅力を伝えることは不可能だと思う。

これはほんとに嘘じゃなくて、面白かったことが多すぎるから。

書評を書く側としてあるまじき、「読んでみてください」と言うしかないです。

Soneyu
Soneyu

それぐらいもう抜群に面白い。とにかく面白いと言いたくてたまらないんです。

芸術とは何か?

表現することとは何か?

人を殺すときの気持ちとは何か?

考えさせられされること、感じさせられることがどんど次から次へと殴りかかってきて、

「とにかく続きが読みたい」っていう、いわゆる没頭する感覚を久しぶりに味わいました。

芸術を題材にしている分抽象的な表現が多くて、

何回も読み返しながら自分の中に景色を組み立てていくのですけど、

これが楽しくて仕方がない。

いろいろな人生がないまぜになっている混沌感が、今まで読んだことのないような小説に仕上げていて、

小説の一番の強みである、「想像する楽しさ」が前面に押し出されている作品です。

だから逆に、想像すると疲れるとか、重めの小説は好きじゃない、という方には向いていないかもしれません。

ただ読書好き、本の虫の方には、強くおすすめしたい一冊です!

【感想】ネタバレあり

芸術を追求する者の感受性

「自分はものすごいことをしているんだと感じたんですよ。生きて動いている人間を二次元の中に封じ込めて停止させることへの背徳感というか。自分が彼女にしていることの暴力性に気づかされたんです」

『カインは言わなかった』

これは画家である藤谷豪がインタビューに答えたときの言葉です。

ぼくは画家でもないし、ましてやヌードを描いた事なんて一度もないので、それがどんなものか全く想像も出来ないんですけど、

でもこの藤谷豪の言葉はスーと胸に入ってきて、とても印象に残りました。

ついついヌード画像を検索しちゃったりして。

ちょっとした“マジ感”

彼女は、特にカゴに商品を詰め込む作業で苦戦しているようだった。ー途中まで入れてから、何か間違えたと思ったのかいくつかの商品をカゴの外に出し、もう一度詰め直しを始めた。

客の男性は自分の後ろの列をこれ見よがしに見やる。彼女は顔を上げなかったが、客が苛ついていることに気づいたようで、ますます動きが慌ただしくなった。だが、動作が増えただけで結果的な速さはあまり変わらない。

ーふとレジ係の女の子に視線を戻すと、彼女はまだ難解なパズルに挑戦させられているかのように懸命に次のカゴと格闘していた。

『カインは言わなかった』

何でもないような一コマ。こういうのがぼく好きなんです。

松浦が妻に言われて買い物に行った先のスーパーで研修中のバイトの女の子が必死にレジの仕事と格闘しているシーンです。

このシーンが結構長くて、松浦の体感時間を表現しているのもあるのかもしれませんけど、作者的になにか意味のあるシーンだったのでしょう。

なんかこういうちょっとした“日常っぽさ”というか、

「ああーあるよね」って感じるシーンが『カインは言わなかった』にはかなりあって

多くのことを経験している人ほど、共感できることが多くなる作品かもしれません。

誉田規一監督の正体

最終的に示された誉田の正体は、「どこまでも芸術にストイックな表現者」でした。

舞台を自分の求める完璧なものに近づけるため、どんなことだってやる人間だったのでしょう。

尾上の考察によると、

藤谷豪の死体を暴露するタイミングが公演初日だったことから考えて、

話題性を作るためには遅すぎること、公演が中止になることを避けようとしたには早すぎることが分かる。

つまり、誉田は自分の舞台を正当に評価されることを心から望む、一人の表現者だったのです。

しかし、そのために人を廃人になるまで追い込んでもいいのかという疑問は残ります。

松浦夫婦の一人娘が誉田によって死に追いやられたことは事実ですし。

ですが、作者はここにも一つの結論を示しているように思うんです。

それは、誉田にこっぴどくやられ殺意を抱くほどにまで追い込まれたあの尾上が、

五年後『カイン』の舞台に主役として立っていること。

「家に帰さない」という理由のためだけに、誉田にあんなにも精神をボコボコにされた尾上がまた、

誉田の元に戻って今度は実力で主役の座をもぎ取ったことが示すのは、

誉田のような表現者を必要としている人もいるということです。

端から見ると誉田の演技指導はクソ野郎の所業で何様なんだと言ってやりたくなりますが、

同じものを追求したいと思う人もいる、中から見なければ分からないことがあるのだということも感じました。

殺人と殺意の狭間

作中、「誰かを殺そう」と殺意を抱き凶器を手に持つ登場人物がたくさん出てきます。

それらが、プロローグの「誰が誰を殺したのか」っていう謎のミスリードになっているんですけど。

でも、結局殺人を犯すのは、作中で一人だけ。

皆元有美も、尾上和真も、松浦久文の妻も、

殺人を実行に移すことはできなかった。

よく殺意を抱くこととそれを実行に移すことには大きな差がある、と言いますけど、

その大きな差が何なのかを表現したのが『カインは言わなかった』なのだと思います。

アベルを刺し殺す瞬間、カインの目には何が見えているのだろう、と何度も考えてきた。

予想した答えは、きっと激しい殺意があるのだろう、というものだった。許せないという怒り、苦しみを与えてやりたいという憎しみ、相手がこの世に存在し続けることへの嫌悪が、命を奪うことへの恐怖や躊躇を振り切った瞬間、身体が動くのだろうと。

だが、思いのほか、感情は虚ろだった。

『カインは言わなかった』

実際に殺人を犯した望月澪の動機にしても、そう。

「きっと止めてくれる」という微かなストッパーを、藤谷豪の「いいよ」の一言が破壊してしまったために、

殺意というよりは衝動的な虚ろな感情が殺人へと駆り立ててしまった。

Soneyu
Soneyu

こういうところに「人間のリアルを映している」魅力を感じました。

まとめ

ここまで芹沢央著『カインは言わなかった』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

本書にはまだまだ書き切れていない魅力がたくさんあります。

あと2記事は書けちゃうよ。

とにかく、中身のある小説が読みたい人、思考しながら読みたい人には超おすすめしたい作品です!

ぜひご一読を!

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