【感想・評価】米澤穂信『Iの悲劇』連なる謎が、驚きの真実へ!構成が鮮やかな連作短編集!!

感想『Iの悲劇』 ミステリー

どうもSoneyuです!

年間300冊の本を読む本好きで、普段は書評や映画の記事を書いています!

ネタバレなし、ネタバレありパートに分けて紹介していくので、まだ読んでいない人にも、読了済みの方もぜひご覧ください!


Soneyu
Soneyu

一気読みして約4時間で読み終えました!『氷菓』の作者ということで、会話のテンポもよく読みやすかったです!

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米澤穂信 著『Iの悲劇』 あらすじ

『満願』『王とサーカス』で史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した著者が放つミステリ悲喜劇!
六年前に滅びた簑石に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。彼らが向き合うことになったのは、一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった――。
徐々に明らかになる、限界集落の「現実」、そして静かに待ち受ける「衝撃」!

こんな人におすすめ!


  • 地方創生の実態に興味
  • 日常のちょっとしたミステリーが好き
  • ハッピーエンドが好きじゃない
  • “オチ”の衝撃を楽しみたい

約4時間で読了!

いやー、ぼく個人的に作者のファンで新作を楽しみにしていたんですけど、かなり面白かった。

雰囲気が好きだっていうのもあるんですけど、構成が本当によくまとまっていて、オチまでが完璧でしたね。


でも本作はどうしようもなく「悲劇」なんです。

ただその悲しさは、どうしようもなく悲嘆に暮れて涙が止まらないとかっていう種類のものではなくて、やるせなくてどこか諦めが滲むような切ない悲しさ

本作の表紙の雰囲気がそのまま物語になったような感じだね。

だから明るすぎる物語が合わない人にはぴったりの作品だと思う。

Soneyu
Soneyu

「悲劇」なのに重くないところも好きなところです。特徴的な住人が引き起こすトラブルを市役所職員が解決する、ミステリー調になった短編だけでも十分楽しめるから。


あと、ぼくの思う本作の良いところが、「悲劇」で終わらないこと

限界集落に人を呼び戻す“Iターン支援プロジェクト”に精一杯手を尽くす主人公を見ていると、地方が抱えている問題市役所職員への先入観、逆に田舎の良いところなど様々な現実に気づかされます。

その中で本作の面白いところは、地方の行政にスポットを当てながら新しいことを示しているわけではないということ。

普通こういうプロジェクト系を書こうと思ったら、新しいことに挑戦する主人公が困難を乗り越える様を描きそうなものですが、本作は今の地方の現状をミステリーという枠で包んで、ぼくたちに突きつけているんです。


「あなたならどうしますか?」

「もっと良い方法があるのでは?」


この諦めしか残らない「悲劇」をどうにかしないと!っていう思いがあるのだとぼくは感じました。

Soneyu
Soneyu

悲しいお話だったね。で終わらない。「こうならないためにはどうすればよかったんだろう」って自然と考えて、自分の中に溜めるもの、気づきのようなものが本作にはあります。

ミステリーだけの作品はもういいかなっていう人も楽しめると思いますよ。


そして、これから読もうと思われる方にはぜひ最初と最後の一文を比べてみて頂きたい

この言葉の意味を噛みしめると「悲劇」度合いが増します。

感想【ネタバレあり】

個性的な住民と不思議な事件、そしてシンプルなトリック

作中様々なトリックが出てきます。


ドローンで籾殻を飛ばして火を付けたり。

鯉がいなくなったと思ったら上に鳥対策のネットを付けてなかっただけだったり。

少年が消えたのは防空壕の中で本に埋まっていたからだったり。

焦げを嫌う人にキノコを食わせるために一つだけ焦げてない毒キノコを皿に盛ったり。

部屋のドアが開かなくなったのはドライアイスが気化して気圧が高くなったからだったり。

何でもないようなトリックなのに、手がかりから謎が紐解かれていく様子はやっぱり面白いですね。


それにしても鯉を育てるのに鳥対策を考えてなかったのは、さすがにバカすぎると思いました。

若さというのは恐ろしいですね。

行動力が桁違いなら、やらかす失敗も桁違い。

でも挑戦しない大人になるぐらいなら、そういう人生の方が楽しいのかもしれません。

河崎由美子の残した名言

河崎由美子というキャラが本作に登場しますが、一番面白かったですね。

「全部のガソリンに一切鉛が入っていないと言い切れない以上は、入ってると考えるのが当たり前」

という名言を残した強キャラです。

イライラさせるキャラですけど、怖いのはこういう人が実際にいそうなことです。

「いないと言い切れない以上は、いると考えるのが当たり前」

用心しないといけませんね…

公務員だって抱える苦悩

本作の主人公は出世コースから外れ、蘇り課に配属になった市役所職員。

公務員っていうと、安定した職業でやりがいはないけど定時には帰れるというイメージかなと思いますが、なんか反省しましたね。

公務員でも人それぞれで、課長のように定時にはばっちり帰る人もいれば、残業して他人から理不尽に怒られても頑張っている人もいる。

だからこそ、この主人公の頑張りがすべて無駄になったようなラストはとても悲しい

公務員もつらい仕事です。

偏見や先入観を持って相手を判断するのはよくないことを学びました。

だからこそ読書は大切なのです!

なぜ「終章 Iの喜劇」なのか?

ぼくがずっと気になっていたのが、本作の終章の題名が『Iの喜劇』であること。

Soenyu
Soenyu

この結末は「喜劇」とは呼べないだろぅ…。ってずっと悶々としていました。

なぜ「喜劇」?

そこで「喜劇」の意味を調べてみました。それがこちら。

1 こっけいみや風刺を交えて観客を笑わせながら、人生の種々相を描こうとする演劇。⇔悲劇。
2 思わず笑いだすような、こっけいな出来事。「事件はとんだ喜劇に終わった」⇔悲劇。

https://kotobank.jp/word/喜劇-50231
Soneyu
Soneyu

いや笑えないでしょ。あのラストは。

観山も課長も裏切っていて。そしてなにより虚しいのが、主人公が二人に向かって怒りのままに罵声を浴びせたりしないことです。

主人公も本心では課長と観山の二人がしたことが間違っているとは言い切れないと分かっているんでしょうね。

だからこっちも相当後味が悪い。

溜まった気持ちの行き場がなくて、すべてがラストの「そして、誰もいなくなってしまった」の一文で、やるせない悲しみに変換された感じがします。


これは誰にとっての「悲劇」なのか。

裏切られ努力が無駄になった主人公にとっての「悲劇」。

優秀故に汚れ仕事を任された観山にとっての「悲劇」。

部下を騙し火消し役として生きるしかない課長にとっての「悲劇」。

追い出された多くの住民にとっての「悲劇」。

それとも、誰もいなくなってしまった簑石にとっての「悲劇」。


これらの色々な「悲劇」が混ざった様子があまりにも滑稽で「喜劇」と呼んだのか。

Soneyu
Soneyu

もう笑うしかないじゃん、こんな結末…って感じですかね。

それとも、いつかはこの話を「喜劇」にしなければ、という前向きな思いからなのか。

Soneyu
Soneyu

この話を教訓にしていこうぜ、みたいな。


正直ぼくは「喜劇」である意味が分かりません。

圧倒的「悲劇」だと思う。

皆さんはどう感じましたか?

よかったらご意見をお聞かせください!

まとめ

ここまで米澤穂信著『Iの悲劇』の書評を書いてきましたがいかがだったでしょうか?

ミステリの面白さもありつつ、学びや気づきもあって、ただのエンタメで終わらない。

米澤穂信さんのファンはもちろん、重すぎない悲劇を楽しみたい人にはうってつけの作品です!

ぜひご一読を!

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