【ネタバレ解説】『いなくなれ、群青』「ピストルスターを護りたい」彼にはたった一つだけ諦めきれないものがあった。

書評
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『いなくなれ、群青』 河野裕 著 あらすじ

11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凜々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。

新潮文庫公式サイト(最終閲覧日5月18日)
https://www.shinchobunko-nex.jp/special/001.html

こんな人におすすめ!『いなくなれ、群青』の魅力を解説!

『サクラダリセット』の著者河野裕さんの、心を穿つ新時代の青春ミステリ!

https://soneyu.com/kokosei-ranobe/

捨てられた人々の暮らす不思議な島、階段島を舞台に高校生たちの一風変わった青春を描く「階段島シリーズ」の第一作です!続編は、

その白さえ嘘だとしても

https://soneyu.com/sonosirosaeusodatositemo/

汚れた赤を恋と呼ぶんだ

凶器は壊れた黒の叫び』

夜空の呪いに色はない』

『きみの世界に、青が鳴る』

と続きます。

まず、お伝えしたいのが、この小説の一番の魅力は「小説であることだということです。

どういうことかというと、文章を操るという小説の特徴を最大限発揮しているってことです。漫画でもアニメでも映画でもできないこと、それが、文章で読み手の想像力に訴えかけ、その情景までも読者の頭の中に浮かび上がらせること。

河野裕さんの文章はそれがずば抜けているように感じます。別に難しい言葉を使っているわけでも、細かく情景を描写しているわけでもない。それなのに、自然とその様子が想像できてしまう。しかも、とても幻想的な雰囲気を纏って。

だから、「小説」が好きな人にはとてもおすすめの作品です!

最後に、僕が一発でノックアウトされた冒頭部分を紹介します!(一番好きな部分です)

どこにもいけないものがある。

さびついたブランコ、もういない犬の首輪、引き出しの奥の表彰状、博物館に飾られた骨格標本、臆病者の恋心、懐かしい夜空。

みんな、停滞している。未来に繋がることはなく、思い出の中で、寒さに震えるように身を縮こめている。それらは悲しいけれど、同時にささやかな安らぎも持ち合わせている。少なくとも彼らが何かに傷つくことはもうない。

『いなくなれ、群青』 河野裕 著

【ネタバレあり】『いなくなれ、群青』【解説】

七草

昔見たあの星空を思い出して、なんだか泣きたかった。真辺由宇はずっと遠くに行って僕にはもうその輝きは見つけられない。これでいいんだ。これが、最良なんだ。なのに胸がずきずきと痛む。頭を振って、あの夜空を忘れようとする。いなくなれ群青、と囁く。僕は暗闇の中にいればいい。気高い光が、僕を照らす必要はない。

『いなくなれ、群青』 河野裕 著

階段を二人で上る、その途中で真辺が消えた直後のシーン。七草の本音がここにあふれています。

七草は真辺が階段島に来てからずっと、真辺を階段島から追い出すことだけを考えていました。 「ピストルスターを護る」ことが、全てを諦めてしまいがちな七草にとってたった一つだけの諦めきれないものだったから。そして、大地のことを利用してまでも真辺に自分を拾わせようとしましたが、失敗しました。

七草は、「真辺を階段島から追い出す」という望みによって「真辺と一緒にいる」という幸せを覆い隠していました。でも、もしくは逆かもしれない。七草は自分の幸せを素直に考えられない悲観主義者だから、「真辺と一緒にいる」という喜びに無意識のうちに蓋をして、「真辺を階段島から追い出す」という願望を作り出してしまったのかもしれません。

真辺由宇

真辺由宇は、とてもまっすぐな少女です。

だからこそ七草は、「大地の悲しみを根本から取り除く」ために真辺が階段島を出て現実の世界に戻ると確信していました。それが、真辺にとって一番優先順位の高いことだと考えたのです。

しかしちょっとだけ違いました

影の位置が変わり、月光の下で、彼女の頬がわずかに上気しているのに気づいた。

「私たちがそのまんまじゃ上手くやっていけないなんて、信じたくない。それじゃまるで今までは幸せじゃなかったみたいだもの。私は、現実の私たちが間違っているんだって証明する」

『いなくなれ、群青』 河野裕 著

ゆっくりと開いた口から漏れた声は、ずっと遠い星からどうにか僕の星まで届いたように、小さく、か細く、不安定に揺れていた。

「だから、お願い。迷惑じゃなければ、手伝ってください」

『いなくなれ、群青』 河野裕 著

真辺は結局、大地のことを現実の真辺由宇に任せ、階段島に残る道を選びました

真辺は、大地を幸せにすることと同じくらい、七草との繋がりが大事だったのだと思います。

そのまっすぐすぎる理想主義のせいであまり人間味を感じない真辺が、こうして頬を赤らめながら手を差し出すと、そのギャップ故なのか、ものすごく可愛く感じました。

まとめ

ここまで『いなくなれ、群青』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

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