【書評・感想】朝井リョウ著『発注いただきました!』「これが本当のお仕事小説!」20の小説とエッセイ・コラム、10周年記念の作品集!

【感想】朝井リョウ著『発注いただきました!』「これが本当のお仕事小説!」 お仕事

朝井リョウデビュー10周年記念の、ある意味・・・・集大成的な作品集「発注いただきました!」

「ある意味」の理由は、普通の作品集とは違って「有名企業から依頼を受けて執筆した」作品だけをまとめたものだから。

「何だ新作じゃないのか」と僕も残念に思ったのですが、「単行本未収録作品、大放出!」という帯の文字に惹かれて読んでみることにしました。

さすがのクオリティを保つ作品たちと、それを自分で批判する朝井リョウの解説。

長さもテーマもバラバラな小説とエッセイを乱雑に読む楽しさ。

いつもと違う趣は、なんだかんだで面白いものです。

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朝井リョウ 著『発注いただきました!』 あらすじ

『桐島、部活やめるってよ』でのデビューから十年。森永製菓、ディオール、JT、JRA、アサヒビール、サッポロビール、資生堂、JA共済など、様々な企業からの原稿依頼があった。原稿枚数や登場人物、物語のシチュエーションなど、小説誌ではあまり例を見ないような制約、お題が与えられるなか、著者はどのように応えてきたのか!?

「キャラメルが登場する小説」「人生の相棒をテーマにする短編」「ウイスキーにまつわる小説」「20を題材にした小説」など、短編小説十四本、エッセイ六本。

普段は明かされることのない原稿依頼内容と、書き終えての自作解説も収録された一冊。

http://renzaburo.jp/hacchu/

こんな人におすすめ!!

  • 朝井リョウ好き
  • 毛色の違うものを読みたい
  • 作品集好き

『発注いただきました!』のここが面白い!

1.条件付きの短編小説とエッセイ

本書の面白いところは、読む前に「その作品がどんな条件で書かれているのか」が明らかにされるところ。

森永製菓からの依頼の場合、

  • 人間を主人公とした、キャラメルが登場する話
  • 「懐かしい」「親しみがある」「ほっと一息できる」「幸せな気分になる」といった世界観を反映し、読後には「いいよね、キャラメル」と思えるような心温まるストーリー。
  • 文字数は、247文字×3話。三箱揃えば一つの物語が楽しめるという仕組み。

「この条件の中で朝井リョウは一体どんな物語を書くのだろう」と一度ふと考えてから読むのと、普通に読むのとでは大違い。

いつもは観客席で見ているだけのはずが、今回は作家と同じ舞台に立ちながらそれを見てる感じです。

「ここでこの商品を出すのか」とか「これを表現するためにこのテーマを選んだのか」とか。

“メタ”の視点で物語を読む。

そう気付いてからは、より楽しかったです。

2.朝井リョウ10年の軌跡

デビュー10周年記念ということで、「発注いただきました!」は朝井リョウの10年の仕事の軌跡を辿るような一冊になっています。

そんな本書だからこそ、一つ気付かされることがありました。

それは、かっこよく言えば、「作家」という職業の特別性・不思議性です。

「作家」ってそもそも年齢が見えにくい。

その上、スポーツ選手のように「上手くなった」とか「成長した」とかいった側面が素人にはわかりにくいものじゃないですか。

だから、「解説の度に朝井リョウが当時を振り返って赤面していること」が、不思議で不思議でしょうがなかった。

いや、10年前の朝井リョウも今の朝井リョウも同じじゃんか。

としか思えない。

調べてみたら東野圭吾は62歳ですよ。

僕は30歳くらいに思っていました。

将来、AIが東野圭吾に成り代わって死んだ後も200年くらい小説を書いていたとしても、もしかしたら誰も気付かないんじゃないか、そうふと思いました。

僕はきっと人並みに本を読むほうです。

けれど、「作家の年齢」とか「作家の成長」という視点を気にしたことはなかったと、ちょっと意外に思ったんです。

3. 漫画『アイアムアヒーロー』のオリジナル小説と、「自身の18歳のころを描写するエッセイ」

全20の作品(19のお仕事小説・エッセイ+新作の書き下ろし短編)の中で特に印象的だったのが、この二つのお話。

「漫画『アイアムアヒーロー』のオリジナル小説」に出会えたのは、ファンとして思いがけない幸運でした。

早狩比呂美の前日譚を描いた小説で、小栗真司との出会いと付き合い始めるきっかけを描いています。

同作のファンはもちろん必見ですが、『アイアムアヒーロー』の要素を抜きにしてもかなり面白い小説です。

引き込まれて2回読みました。

原作の漫画を知らない人にもおすすめのお話。

そして、「自身の18歳のころを描写するエッセイ」。

僕自身が19歳ということもあり、ドストライクに思うところがあった作品です。

簡単に言えば、朝井リョウの二度の「選択」を描いたエッセイ。

一度目は「進学か浪人か」の選択、二度目は「小説家を目指すかどうか」の選択。

印象的なのは、二度目の選択。

朝井リョウが20歳になる直前の話。

19歳をタイムリミットに決めていた朝井リョウは、誕生日までの新人賞の締め切りを片っ端からチェックして、

当時、執筆以外に熱中していたものをすべて絶ち、授業とバイト以外は家にこもって書きに書きまくる生活を選択したといいます。

友達は減ったけど、「小説家」の肩書きを手にすることができました。

これを読んでから、僕は自分の「選択」を探す日々です。

本書は様々なテーマが入り乱れている作品集。

思いがけないところで自分の人生に影響を及ぼすものが、手に入るかもしれません。

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①朝井リョウデビュー作『桐島部活やめるってよ』

② 直木賞受賞作『何者』←映画化も

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まとめ

『発注いただきました!』のここが面白い!

  • 条件付きの短編小説とエッセイ
  • 朝井リョウ10年の軌跡
  • 漫画『アイアムアヒーロー』のオリジナル小説と、「自身の18歳のころを描写するエッセイ」

「依頼を受けて執筆した」19の小説やエッセイに、新作書き下ろしの短編小説を加え、章末に朝井リョウの解説を加えた400ページのちょっと分厚い一冊。

どれもじっくり読むと面白いものばかりで、普段の小説とは違った趣が味わえるのが本書の魅力です。

入り乱れるテーマ、小説とエッセイ、ユーモア溢れる解説と。

朝井ファン以外の方が手に取っても、きっと楽しめると思います。

朝井リョウの放つ「本当のお仕事小説」、ぜひご一読を!!

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