【感想・評価】逸木裕『電気じかけのクジラは歌う』AIに人は負けるのか?すべてのクリエイター、必読の一冊!!

『電気じかけのクジラは歌う』表紙 SF

どうもSoneyuです!

年間本を400冊読むほどの本好きであります!

この記事では、逸木裕さんの『電気じかけのクジラは歌う』のレビューをネタバレなしで書いていきます!

390ページとボリューミーでしたが、4時間ほどで読み終えました!

時代の先を見るSF。かなり満足度の高い作品です!

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逸木裕 著『電気じかけのクジラは歌う』 あらすじ

人工知能が個人にあわせて作曲をするアプリ『Jing』が普及し、作曲家は絶滅した。『Jing』専属検査員である元作曲家・岡部のもとに、残り少ない現役作曲家で親友の名塚が自殺したと知らせが入る。そして、名塚から自らの指をかたどった謎のオブジェと未完の新曲が送られてきたのだ。名塚を慕うピアニスト・梨紗とともにその意図を追ううち、岡部はAI社会の巨大な謎に肉薄していく―。私達はなぜ創作するのか。この衝動はどこから来るのか。横溝正史ミステリ大賞受賞作家による衝撃の近未来ミステリー!

こんな人におすすめ!


  • 創作者、表現者
  • AI、近未来に興味がある
  • 音楽好き

あなたは創作者になりたいですか?

YouTuberや、ライバー、ブロガーなど、今や誰もが創作者になれる時代。

一億総クリエイターとも言われる中で、本作は近未来のクリエイターの苦悩をリアルに描き出している。

Soneyu
Soneyu

小説家志望のぼくも深く考えさせられました

音楽をテーマに、主人公は作曲家だが、本作が伝えるメッセージはどの分野のクリエイターにも響くものがあるでしょう。

小説家だろうと、漫画家だろうと、画家だろうと。

「AIとロボットに、人間のクリエイティビティを奪われたとき、あなたは自分の作品とどう向き合うか?」

これが本作の主題。

我々が対峙するべき巨大な敵と、光り輝く結末がここに示される。

感想【ネタバレなし】

音が聞こえてくる

今日の彼女の演奏には、そこに薄っすらと光が混ざっている感じがした。薄い赤。薄い青。薄い緑。彼女が音楽に込めた感情が、色となって発露している感じがする。梨紗はピアノを通じ、様々な色をまき散らし続ける。

『電気じかけのクジラは歌う』

音楽の描写がほんとにすごい。

ほんとに小説か?と思うほどに、音色が頭の中に入り込んでくる。

小説は音を直接表現することは出来ないけれど、主人公の感覚を通してぼくたちの頭の中に音楽が流れ込んでくる。

この頭の中で再生される音楽は、読む人一人一人違っていて。

これって素晴らしい小説の魅力だとぼくは思う。

小説にしか出来ないことだから。

音楽をやっている人だったらもっともっと鮮明に音を感じることができると思う。

“ミステリー”ではない

殺人事件が起きて探偵が犯人を見つける、みたいな純粋なミステリーじゃない。

この小説のテーマは「創作者の苦悩」で、言うなれば人の心の深奥を暴くミステリー。

「音楽の天才が死ぬ直前に考えたこととは?」

自殺した音楽の天才“名塚楽”は死の直前に不可解な行動を取る。

主人公はその行動の意味を探すのだが、どの仮説も生前の名塚の姿と重ならない。

あんなに音楽に一途に向き合っていた名塚が、本当に

世間の評価欲しさに、音楽の歴史に名を残すために、AI会社に協力したのか?

その本当の意味が明らかになったとき、

音楽の力と名塚の想いが、大切なことに気づかせてくれる。

Soneyu
Soneyu

とても気持ち良い着地の仕方でした

あと、ちょっと生なことを言うと、もう少し名塚の死の描写を増やして欲しかった。

感情移入が中途半端な感じがしたかな。

主人公の出した答え【ネタバレあり】

音楽が無数に溢れた世界。自分の起こせる波及は、名塚ほど大きいものではないかもしれない。でも、きっと誰かには届く。その誰かが、また誰かに波及させていく。そうやって生まれる無数の連鎖。自分は、その一部になる。音楽の一部になるために、音楽を作る。

『電気じかけのクジラは歌う』

作者は、音楽とは「波及」だと言う。

たとえ小さな波及だったとしても、それが誰かの心に届いてその人の一部になったなら、作曲を続けることには意味があると。

自分の必死に作った曲は、AIにだって簡単に作れてしまう。

けれど、作った人の心までAIはトレースすることは出来ない。

だから、作ることには価値があるんだっていう結論。

これは創作者にとって救いになる結論ではあるけど、逆に言えば。

逆に言えば、AIが人間のクリエイティブな能力に噛みつく時代になったとしたら、人間はそういうところで戦うしかないとも言える

作品のクオリティではなくて、作品を作った経緯とか歴史とかそこに載せる思いとか、そういうところで戦うしかない。

これから先、創作の形はどんどん変わっていって、今までの価値観が通用しなくなる時が来るかもしれない。

そうなった時、ぼくらが取れる道は2つ。

新たな価値を見つけて創作を続けるか、AIと共に生きるか。

主人公の選んだ道と答えを、ぜひ本書の中で!

まとめ

ここまで『電気じかけのクジラは歌う』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

創作者、表現者の方、もしくはそれを目指している方は必読の一冊だと思います。

AIの力と対峙したときに、自分の作品とどう向き合っていくのか。

『電気じかけのクジラは歌う』を通して、ぜひ考えてみてください!

SFの名作はいかがですか?

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