【感想・評価】乾ルカ著『明日の僕に風が吹く』心に傷を負った少年が辿り着いたのは、北海道の離島だった。その島で少年が見たものとは。

【感想・評価】乾ルカ著『明日の僕に風が吹く』心に傷を負った少年が辿り着いたのは、北海道の離島だった。その島で少年が見たものとは。 青春

どうもSoneyuです!

年間300冊の本を読む本好きで、普段は書評や映画の記事を書いています!

ネタバレなし、ネタバレありパートに分けて紹介していくので、まだ読んでいない人にも、読了済みの方もぜひご覧ください!


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乾ルカ 著『明日の僕に風が吹く』あらすじ

熱い涙なしでは読めない、北海道の離島を舞台に心の再生を描く青春成長小説
たったひとつの失敗で夢と居場所を失くし、ずっとうちひしがれていた。
強い風に海鳥舞う北海道の離島との出会いが、少年を救い新たな試練を与える。

作者紹介

本書の作者乾ルカさんは、藤女子短期大学を卒業してから銀行員や官庁の職員を経て、2006年に『夏光』でデビューしたそうです。

僕は、先日出た『コイコワレ』しか読んだことないんですけど、この『コイコワレ』で乾ルカさんに大惚れしまして。

螺旋プロジェクトの一冊として読ませて頂いたんですけど、超面白かったんですよ!

題名から内容が分からないから、手を出しづらい感じがあって、僕も最初は読むつもりはなかったんですけど、読んで正解だったと今では思います。

だから、今回の『明日の僕に風が吹く』も超楽しみにしてて。

『明日の僕に風が吹く』を面白いと思った人がいるなら、次に読むべきは『コイコワレ』だと思います!

こんな人におすすめ!


  • 過去に後悔してる人
  • トラウマを抱えている人
  • 自分の居場所を感じられない人

感想・評価【ネタバレなし】

ここからは『明日の僕に風が吹く』のどこが面白かったのかを解説していきます。

タイトルと表紙

このタイトルと表紙を見て、「なんかいいな」と思ったなら読んでみると良いと思います。

言葉にしにくいんですけど、この雰囲気がそのまま物語になったような作品でした。

きっと後悔しないと思います!

東京と180度違う、離島生活

作者も北海道の天売高等学校に取材したらしいのですが、本書で描かれる離島での生活がとてつなくリアルです。

リアルといっても都会しか知らない僕にリアルもへったくれもないのですが、

知らない価値観や、島独自のルール、特に車が全く通らない道路になんで信号機があるのかという理由なんかがとても面白くて、

“っぽさ感”をめっちゃ感じました。

これは『コイコワレ』でも感じたことで、乾ルカさんの読者を読者の知らない世界に連れて行く能力は本当にすごいと思います。

「こんな生き方もあるんだ」だけじゃなくて、「こんな生き方もいいなー」と思わせてくれるところが好きですね。

心の情動と再生

物語の構造はとてもシンプルで、一言で言うと、「トラウマを背負った少年が、離島での経験を経て再出発するお話」

北海道の離島の中で、豊かな自然に触れ、島民の温かさを感じ、同級生との衝突と仲直りを通じて、

自分の存在価値と生き方について、主人公が模索していく。

その心の情動と再生の描き方が、とてつもなく上手くて。もはやエモいです。

思春期特有の揺れ動く感情や、ある体験を通した当たり前のことへの気づき、自分の思ってることと相手の思ってることのズレなんかを、

主人公のフィルターを介してシンプルかつ叙情的な文章で綴っていて、共感するところだけじゃなく、むしろこちらが学ぶことがたくさんある。

展開的な面白さももちろんあるんだけど、それ以上に人の心の繊細さをめっちゃ丁寧に描いているところが本書の魅力なんだと思う。

感想・考察【ネタバレあり】 

ここからはネタバレありで本書を深掘りしていこうと思います。

物語の構成はシンプルなのに、厚みと深さを感じる

このお話の構成は、大変シンプルで、大まかにくくれば、

東京でトラウマ→離島で再生→夢に向かって再出発

長い目で見れば、人生の一つの寄り道を切り取って描いているような印象を受けます。

読み始めた時は、もっと大きな時間の流れ、言ってみれば人生そのものを描いていくのかなと思ったんですけど、

意外と高校だけの時間で終わっちゃいましたね。

第二部のような形で、主人公“有人”のたどり着いた未来を見てみたかったですねー。

それでも、時間が凝縮されていたからこそ、物語に厚みと深さを感じたのだと思います。

有人の心情のアップダウンが激しくて。何回立ち直して打ちひしがれてを繰り返したんでしょう。

  • 東京でのトラウマと、水産実習で自分のアイデアが認められたこと。
  • 親戚との会合と、道下との再会。
  • 研究論文での叔父の言葉と、桃花たちとの会話と取材音源。
  • そして、有人が前を向くきっかけとなった、船で見た初日の出と、エピペンで人を救った夜の出来事。

一番最後のエピペンの一件はなんか出来過ぎで取って付けた感がありましたけど笑

急に伏線の男の人が登場して、異分子が入り込んだ感覚がありましたね。

でもそれは物語の本質じゃないからどうでもよくて、

このまとまった構成とシンプルな閉じ方が、読んだ後のほんとに風を感じるような爽快感を生み出しているのだと思います。

作品のテーマ

僕は読んだ本のテーマ、伝えたいことは何だろうって毎回考えるようにしているんですけど、

本書『明日の僕に風が吹く』のテーマは分かりやすかったですね。

小西さんをエピペンで助けるシーンの有人の情景描写に全てが表れていると思います。

ー未来の自分を想像してみないか。
そのとき有人は、叔父の声を聞いた。
ー進んだ先にあるもんなんだよ。
ー動け。行動しろ。
誠の父と和人の声も。そして。
ー俺は出る。
誠。 

『明日の僕に風が吹く』

要するに、「生き方」だと。

叔父を初めとする有人が関わってきた人たちが教えてくれたのは、

未来の自分を想像して今を振り返ってみた時に、後悔しないような生き方をしろ

ということ。

この答えは、東京で有人がしたことを肯定する結論でもあり、結局は巡り巡って有人が自らのオリジンを取り戻すという物語になっているのです。

それにしても、この言葉は僕にとっても、とても大事な言葉になるなーと感じていて。

自分次第でどんな道も選べるこの時代に、大きな弊害となるのが、選択肢が多すぎて困るということです。

昔は大学入って就職して引退するというレールが勝ち組の道になっていたけど、今は人生100年時代で、自分の道を自分で決めなきゃいけない。

そのときに、この「未来の自分が今を振り返った時に、後悔しない生き方をしろ」の言葉を胸に、選択を重ねていけばきっと良い人生になると思うんです。

だから、皆が知った気になってるのに実践できていない、この言葉を深い意味で教えてくれた『明日の僕に風が吹く』には感謝しかないです。

良い作品に出会ったと心の底から思いました。

一番好きなシーン

個人的に一番好きなシーンが、誠と有人の別れのシーン

目を見開く。近づいてくる防波堤の突端に、誰かが立っている。誠だ。
「誠!」
叫んだ。波音、エンジン音、風邪、すべてにかき消されようと、もう一度声を張った。
顔が見える。遠くても、瞼が腫れているのがわかる。その目が赤いのもわかる。でも、誠は笑っていた。力強く励ますように。
「誠!僕はいつか必ずー」
たった一度の大きな頷きが返ってくる。
まことは首に巻いていたマフラーを取った。そしてそれを握りしめ、有人へぐっと突き出した。

『明日の僕に風が吹く』

『コイコワレ』も、別れのシーンで終わっていて、なんかどこか寂しいような悲しいような、幸せ100%で終わらないところも、僕は好きです。

別れで終わるから、未来を想像して続きを読みたくなるのでしょうね。

まとめ

ここまで乾ルカ著『明日の僕に風が吹く』の書評をしてきましたがいかがだったでしょうか?

面白いと思った方は、次に『コイコワレ』を読んでみることをおすすめしますよ。

今青春まっただ中の人も、大人になって青春を忘れてしまったという人も、誰もが共感して何かを掴み取れる

そんな作品だと思います。

立ち上がろうともがく人に勇気をくれる、温かくて寂しい物語を、あなたもぜひ!

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